レッスン　教室紹介

隣の家からピアノの音色が聞こえてくると、すぐさま窓際まで駆け寄り、そこでピアノを弾くお姉さんの姿を眺めて過ごす。これが幼い頃の私の日課でした。

その時私は三歳。「私もピアノを習いたい」と母に放った一言がピアノとの出会いになりました。私が習っていた先生は武蔵野音大出身の先生だったことから、中学生の頃には武蔵野音大の教授に指導を仰ぎ、高校三年生の時は毎月上京して練習に励んでいました。当時は瀬戸大橋も開通していなかったので、宇高連絡船に揺られて本州へ。

寂しさのあまり新幹線の窓側へ座ると外の景色を見ながら泣いていたこともありました。しかし、そんな私を励ましてくれたのは同じレッスン門下生や講習会で知り合った友人、そして遠方から同じ音大目指して絶対に合格しようと誓い合った友達でした。どれほど心強かったことでしょう、今でも感に堪えません。

音大卒業後は地元へ帰省しました。そこではたくさんの生徒たちとの出会いが待っていました。音大四年生の頃に一年間だけとある個人ピアノ教室でアルバイトをしていたこともあり、ピアノ講師としてレッスンをすることには少々自信はありました。しかしその過信はものの見事に崩れ落ちていきました。

生徒にピアノを教えることは意表をつかれることの連続で、生徒たちも千差万別。どうしたら伝わるのだろうかと試行錯誤し悩んだこともありましたが、私自身が子供たちに寄り添い、同じ目線に立ち、気持ちを汲み取りながらレッスンすることを心掛けていくうちに、次第に私の中でわだかまりが解けはじめ、レッスンそのものが楽しさへと変わり、一人一人にピアノを通して物語が出来上がってくる喜びを覚えだしたのです。

そんなピアノ講師生活も私の結婚とともに一旦ピリオドを打つこととなり、後ろ髪を引かれる思いで、生徒たちとお別れをしました。

これは私が専業主婦と子育てに専念していた頃のエピソードです。

実家の母から一本の電話がありました。私がピアノを教えていた地域では毎年小学校卒業シーズンになると小学六年生たちが「六年間で一番心に残ったこと」と題してメッセージを書き入れ、その文集が地域一帯のポストに投函される習慣がありました。母は開口一番こう云いました。「ピアノ教室に習いに来てくれていたM君が教室のことを書いてくれているわよ。六年間で一番心に残った出来事がピアノを習ったことですって。」その一言を聞いた瞬間、止めどなく涙があふれ出しました。今でも思い出すと目頭が熱くなる思いです。

M君は当時、二人のお姉様と一緒にいつも笑顔で通ってくれていた生徒さんでした。そのM君も今では三十三歳くらいでしょうか。きっと素敵で立派な大人になっていることでしょう。

現在私は八王子市内某所にてピアノ講師を務めさせていただいております。今日までのピアノを通した一期一会が私をつくってきたように、このソピック音楽教室での出会いがこれからの私、そして生徒の皆さんをつくっていくのだと信じています。